2015年6月12日金曜日

ITmedia名作文庫 太宰治『津軽』の連載が始まっています。





題字は筆書き、絵は木版画の作品です。
どちらの作品も気に入っています。


津軽、青森といえば「トゲクリガニ」。
青森ではトゲクリガニとシャコはお花見に食べるそうです。
お花見といえばトゲクリガニとシャコ、トゲクリガニとシャコといえばお花見、だそうです。
作中にもお花見をするシーンが出てきて、本当にトゲクリガニとシャコを食べていたのでそれを絵にしました。


風景画の方は弘前城からの景色(イメージ)です。
作中の下記文章を絵にしたいと思いました。
文章からこの色を選びました。

 あれは春の夕暮れだったと記憶しているが、弘前高等学校の文科生だった私は、ひとりで弘前城を訪れ、お城の広場の一隅に立って、岩木山を眺望したとき、ふと脚下に、夢の町がひっそりと展開しているのに気がつき、ぞっとした事がある。私はそれまで、この弘前城を、弘前のまちのはずれに孤立しているものだとばかり思っていたのだ。けれども、見よ、お城のすぐ下に、私のいままで見た事もない古雅な町が、何百年も昔のままの姿で小さい軒を並べ、息をひそめてひっそりうずくまっていたのだ。ああ、こんなところにも町があった。年少の私は夢を見るような気持ちで思わず溜息をもらしたのである。万葉集などによく出て来る「隠沼(こもりぬ)」というような感じである。私は、なぜだか、その時、弘前を、津軽を、理解したような気がした。(p32)




津軽 太宰治

太宰治の代表作の1つである『津軽』は「新風土記叢書」の1冊として、昭和19(1944)年11月、小山書店から書き下ろしで刊行されました。「こんどの旅に依って、私をもういちど、その津島のオズカスに還元させようという企画も、私に無いわけではなかったのである。都会人としての私に不安を感じて、津軽人としての私をつかもうとする念願である。言いかたを変えれば、津軽人とは、どんなものであったか、それを見極めたくて旅に出たのだ。私の生きかたの手本とすべき純粋の津軽人を捜し当てたくて津軽へ来たのだ。そうして私は、実に容易に、随所に於てそれを発見した。」(「蟹田」より)。巻頭に「ミニ解説」(過去と現在をつなぐ旅:北條一浩)を付け、2010年の常用漢字改定に照らし合わせて読みやすくした縦書版電子書籍です。(近日刊行予定)